成人病の起きる仕組み

食べることは必要不可欠である一方、栄養素はそれ自体、身体にとって異物、同化やエネルギーへの変換過程で炎症の原因を作り、細胞を傷つけます。正常な場合、防御メカニズムが働いて炎症や酸化ストレスは鎮静化されます。しかし、血糖値が正常な範囲でも、高い状態が長年続くと炎症は広がり、様々な臓器に異常が生まれます。いわゆるインスリン抵抗性が発現して、高血糖・高血圧・脂質異常症などを伴うメタボリックシンドロームへと発展していきます。

インスリン抵抗性

インスリンは炭水化物、脂肪、タンパク質の代謝を制御するホルモンです。食事や飲み物、ストレスで血糖値が上がると膵臓から分泌され、脂肪組織では、脂肪分解を阻止します。肝臓では、グリコーゲンを糖に分解する反応を停止させ、筋肉では糖やアミノ酸の取り込みを促し、筋肉が必要とする機能、補修、成長に関与する遺伝子発現を促進、筋肉を成長させます。脳では、糖の取り込みを促進、エネルギーを作ります。脳細胞のシナプス結合を強め、学習能力や記憶の保持や神経伝達物質の制御、血管形成や血管の機能にも関わっています。

甘い飲み物を飲み続けたり、砂糖がたくさん入った食品を常に食べていると、血糖値が上がりすぎないようにインスリンの分泌量が高く保たれ、高インスリン血症を招きます。そうなると、肝臓や脳細胞のインスリン受容体の発言量が低下し、インスリンに反応しなくなる、いわゆるインスリン抵抗性の発現が起こります。

肝臓がインスリン抵抗性を発現すると、肝臓のブドウ糖生産が過剰になり、ブドウ糖は中性脂肪に変換され、肝脂肪として蓄積、脂肪肝と高脂血症の原因となります。脳がインスリン抵抗性を発現すると、脳細胞に燃料となるブドウ糖が取り込めないだけではなく、脳がうまく働かない、細胞や毛細血管の修復や新生ができないため、徐々に脳細胞が失われて脳が縮むと考えられています。このことから、アルツハイマー型の認知症は「3型糖尿病」 (Alzheimer's disease is type3 diabetes)と呼ばれ 、子供のうつ病(depression)や多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder; ADHD)、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)の発症と、妊婦の高インスリン血症(hyperinsulinemia)や妊娠性糖尿病(gestational diabetes)の関係が指摘されるのです。