情けは人の為ならず

私がよく聞かれる質問のトップ2は「痩せるには、何をどれだけ食べたらいいですか?」と「(スポーツ選手の子供の)体重を増やすには何を食べさせれば良いですか?」です。ショートアンサーは「わからない」です。というのは、”痩せる”、”太る”は食べ物だけで起きる現象ではないからです。

去年始めた”子ども栄養環境整備士認定講座”の教科書にも書いたのですが、栄養は名詞ではなく動詞です。動植物の命をいただいて、また、自分では消化できないものは腸内微生物に託して、消化・吸収することで必要な栄養素を体内に取り込み、代謝活動で使い、不必要なものを排泄する行為を含んで栄養と言います。この栄養活動は、運動や人間関係、ストレスレベルによって変わるホルモン分泌や神経伝達によって常に影響を受けるので、全く同じ食べ物を同じ時間に食べたとしても状況によって太ったり痩せたりします。

逆に言えば、もしこれらすべての栄養活動が100点満点なら、子どもの骨も筋肉も順調に成長し、大人は体脂肪を必要以上に貯めることなく骨密度、筋肉量を維持できるという訳です。ではどうすれば栄養活動を改善できるのでしょうか?

答えは”原始時代の暮らし”に潜んでします。私たちは、数万年前の生活に適応するように進化したホモ・サピエンスという種です。原始時代に適応した身体で現代を生きているので、身体と環境の不適合が起き、進化の過程では想定外の体型に関する問題が起きているのです。今回はこの問題を解く鍵の1つを紹介します。

太古の昔では、コミュニティーの中で、親切にする、親切にされること無しには生きることができませんでした。そして親切にした人もされた人にもオキシトシンという”幸せホルモン”が分泌することが現在の科学でわかっています。オキシトシンは抗酸化、抗炎症機能を高め、血圧を下げ、胃腸の動きを活発にし、全身をリラックスさせる、つまり、栄養活動を改善するのです。逆に、孤立したりプンプン怒るとそれだけで過食になり、お腹ポッコリの原因になることも知られています。

もし新年の抱負がまだなら、「毎日人のために何かをする」はいかがですか?それだけで栄養活動が改善され、理想の体型に近くかもしれません。まさに、「情けは人の為ならず」ではないでしょうか?(2019年1月)

Kayo Arima