スポーツ栄養(続き)

回復には食事、運動には燃料

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Kayo Dietでは、アスリートの栄養をFood、Fuel、Fluid(食事、燃料、水分)の3つのカテゴリーに分けて考えます。 Food(食事)は、炭水化物、タンパク質、必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどの必要な栄養素を豊富に含み、順調な発育と素早い疲労回復に不可欠な栄養です。Fuel(燃料)は、糖類やでんぷん質のように素早く血糖となって脳や筋肉の働きを維持する栄養で、Fluid(電解質を含む水分)は、どんな時でも必要ですが、天候や運動強度によって必要量が変化する栄養です。右の図は、非運動時やリラックス時には栄養価の高い食事が不可欠であるのに対し、運動負荷が上がるにつれて燃料と水分補給への要求が上がり、それと比例して、消化に時間のかかる栄養価の高い食事への欲求が下がることを示しています。 

 

ティーンアスリートの基本方針

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ティーンエイジャーの栄養は、大人とは違います。特に成長期のアスリートは、回復のためだけではなく、思春期の順調な発育を維持するために大人より多くの炭水化物を必要とします。ティーンアスリートの場合、1日の摂取カロリーの45−65%(1日に体重1kg当たり3−8g)を炭水化物で摂取することが推奨されています(1)。スタミナ切れに悩む選手には、試合1−2日前から炭水化物摂取量をカロリーの65%(1日に体重1kg当たり8−9g)に増やしてみてください。その場合、でんぷん質を増やしただけ糖類や脂質を下げることが肥満防止のために重要です。ティーンアスリートに最も不足しがちな栄養素は、カルシウムとビタミンD、鉄分、ビタミンB12です。アメリカでは9−18歳までのカルシウムの必要量は男女ともに1300mg、1日に4カップ(250mlを4杯)のスキムミルクが目安です。ミルクや豆乳などは、カルシウムとともにビタミンDも強化されているので、このぐらいのミルク類を飲んでいれば、推奨量(15μg)の大半は賄えられます。ビタミンDは魚に豊富に含まれています。鉄の必要量は8mgですが、10代の女子は15mgに上昇します。鉄は、赤身肉、レバー、ほうれん草、卵、豆類や鉄分を強化したシリアルに豊富ですが、生理の始まった女子やベジタリアンの子供には、サプリメントが必要かもしれません。また、ベジタリアンアスリートにはビタミンB12のサプリメントが必要です。表1は、14歳から18歳のティーンアスリートが必要とする栄養所要量の一般例を表しました。

表1.14−18歳のティーンアスリートの栄養例 

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Modified from Smith et al. (3)
 

時差ボケ対策

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体内時計は、睡眠だけではなく、運動に必要なホルモン分泌や、 消化吸収に必要な酵素などの分泌もコントロールしています。ですから、遠征の多いスポーツでは、体内時計の調節がとても重要です。 一般的には1時間の時差の補正に1日かかると言われています。睡眠や食事時間を数日前から徐々に現地時間に合わせる、機内で充分な水分を摂る、現地で日光を浴びる、などは時差ボケの軽減に有効だとされています。最近注目されている方法は、14−16時間の絶食で体内時計をリセットする方法です。これは、通常の生活時間帯に食べていると、概日リズムが昼夜サイクルに合わせておきるのに対し、通常の睡眠時間にのみ食べるようにすると、体内時計が食事時間に合わせてリセットされるという発見に基づきます(2)。例えば、サンディエゴの選手が昼間出発の便で日本に遠征する場合、朝食から 到着まで絶食して、到着後すぐに夕食を摂ると体内時計が日本時間にリセットされるということになります。もちろん、翌日の朝食は、絶食分を取り戻し、体内時計をさらに刺激するためにもしっかりと食べることが重要です。