なぜお砂糖がよくないのか?
砂糖の取り過ぎは今や社会問題、様々な慢性病の原因を作っています。砂糖って何ですか?と、いわゆる栄養士に聞けば砂糖は空っぽのカロリー、又は炭水化物の一つというでしょう。でもお砂糖(ショ糖)はただの炭水化物ではありません。 砂糖は、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した糖であり、二糖類の一種です。砂糖は、小腸で ブドウ糖と果糖に分解吸収され、ブドウ糖の80%は血中へ、果糖の100%は肝臓に送られます。 この反応は短時間で起こるため、血糖値を急激に上昇させ、肝臓に負担をかけます。
ブドウ糖は炭水化物として代謝されるのに対し、果糖は肝臓に運ばれ脂肪に変換され、肝臓に多大な負担をかける物質なのです。例外的に、栄養不足や激しい運動などで身体が飢餓状態に陥っていて、肝臓内のグリコーゲンの貯蔵量が低くなっている場合は果糖も66%まではブドウ糖に変換され、炭水化物になります。ところが、炭水化物中心の食事やスイーツを食べる習慣がある人の肝臓では、グリコーゲンは満杯状態なので、果糖は脂肪に変換されます。炭水化物も脂肪も私たちに取って必要な栄養素ですが、他の食べ物と違い、砂糖はそれだけでそれ以外の栄養素は含まれません。だから糖度の高い飲み物はとても身体に悪いのです。 どういうことか詳しく説明しましょう。
ブドウ糖はインスリンを上げます。食べたブドウ糖は血糖値を上げ、その刺激によって膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは取り込みのホルモンです。体内のあらゆる細胞がインスリンの刺激でブドウ糖を取り込みます。食べたブドウ糖の2割は肝臓に運ばれてグリコーゲンとして貯められます。一般的に成人は、80−100g程度(カロリーにして400カロリー程度)のグリコーゲンを貯めることができます。肝臓内でグリコーゲンとなったブドウ糖は血糖を上げないし、飢餓状態や激しい運動などで血糖値が下がると、分解してブドウ糖を血中に出してくれるありがたいものです。ところが運動をせずに甘いものや炭水化物を多く食べていると、グリコーゲンの貯蔵量はマックスに達し、肝臓内で余ったブドウ糖は中性脂肪に変換されて血中に出て行きます。血中の中性脂肪が高くなると心臓病の危険性が上がります。また、血糖値が高いと、糖は細胞内でタンパク質とくっついて、タンパク質を固くし老化させ、血管や骨がもろくなる原因になります。さらにタンパクと結びつく事で、活性酸素を放出、臓器や血管を傷つけます。だからブドウ糖の取り過ぎはよくないのです。でももっと悪いのは果糖です。
果糖は、メイラード反応(老化を進行させる体の糖化)をブドウ糖の7倍の早さで進行させます (Am J Clin Nutr November 1993vol. 58 no. 5 779S-787S)。この反応は体中のいたる所でおこります。皮膚や骨の成分であるコラーゲンがメイラード反応で糖化すると、肌の張りと弾力性がなくなり、骨の質(骨強度)が劣化します。また、糖化された老廃物の蓄積が白内障や動脈硬化の進行(高血圧症)となって表れるなど、老化の顕著な特徴と直結しています。アルツハイマー病は脳内のアミノ酸が糖化される現象という説も存在します。つまり、果糖は体の老化を早め、糖尿病の合併症やメタボリックシンドロームなどの危険性を高めます。果糖は肝臓で代謝されますが、グリコーゲンにはなれません。かわりに 中性脂肪に変換され最終的には体脂肪となり、心臓病の危険性を高めます。果糖を多く取るとそれを変換するためのエネルギー源ATP(アデノシン3リン酸)が不足します。それによって副産物の尿酸量が増加、通風の危険性を高め、血圧も上昇させます。 果糖は酵素反応を介して肝臓のインスリン感度を下げます(インスリン抵抗性の発現)。インスリンの刺激に鈍感になった肝臓はブドウ糖を取り込む機能が落ち、結果として血糖値が上昇、悪化すると糖尿病になります。肝臓がインスリン抵抗性を発現すると、膵臓はもっとインスリンを分泌、高インスリン血症を引き起こします。高濃度のインスリンは脂肪細胞での脂肪の取り込みを刺激、特に内臓脂肪を増やします。高濃度のインスリンは、食欲を抑えるホルモン、レプチンの視床下部への刺激を阻害し、それによって見せかけの飢餓感が生まれ,食欲が増します。果糖はまた小腸の粘膜を弱め、炎症や活性酸素の影響を受けやすくします。それによりますますインスリン抵抗性が増長されてインスリンレベルが上昇します。
天然、人口に関わず、ブドウ糖と果糖は存在します。たとえば、麦芽糖はブドウ糖2つの二糖類、ラクトースはブドウ糖とガラクトースの二糖類、典型的な蜂蜜の成分は、果糖38%、ブドウ糖31%、麦芽糖7%、ショ糖1%その他多糖類が2%、甘みの強いアガベシロップはほとんどが果糖(56−92%)とブドウ糖で、身体に良いとされるオリゴ糖はいろいろな2糖類と多糖類の混合です。
アメリカ人は平均で1日6.5オンス、年間で約130パウンドの砂糖を消費します。最近のCDCの調査で、約50%のアメリカ人が一日1缶、5%が4缶以上の砂糖の入った炭酸飲料を飲み、糖類の摂取量を 換算すると、 一日のカロリー摂取の約20−25%、小さじに換算すると、22杯の砂糖を取っている事になります。10代の子供ではその割合がもっと悪く、40%の摂取カロリーが砂糖からという報告もあります。
果糖は酔っぱらわないアルコール?
果糖(フルクトース)は“酔えないアルコール”と提言する論文があります。果糖は果物や蜂蜜にも含まれますが、いわゆる砂糖はブドウ糖と果糖からなる二糖類だし、最近健康志向の人たちに人気のアガベシロップの半分以上(メーカーによっては90%以上)が果糖です。果汁100%ジュースにもたっぷり含まれます。ブドウ糖は高分子のでんぷんとしてご飯やパンに多く含まれ、小腸で分解、ブドウ糖として吸収され、2割は肝臓、8割は他の臓器に運ばれます。体内ではグリコーゲンという高分子の形で肝臓や筋肉に貯蔵されます。血糖インデックス(Glycemic Index 又は GI値)が高く、血中のインスリン値を上げますが、あまり甘くありません。一方、果糖も小腸で吸収されますが100%肝臓に運ばれます。インスリンを上げないし、 GI値 が砂糖より低く、とても甘いです。コストも安く大量に作れるので食品添加物としても広く利用されています。その結果、果糖の消費量は世界的に飛躍的の伸び、それと同時に肥満や慢性病が多くなっているという報告があります。砂糖の半分は果糖であるにもかかわらず、一般的には砂糖は精製された白米や小麦粉と同様の”空っぽのカロリー”として扱われます。しかし、肝臓のグリコーゲンの貯蔵量が満杯の場合、果糖はエタノールと同様に代謝されます。大量の果糖は肝臓のミトコンドリア(細胞内のエネルギーを作る場所)の仕事量を圧倒し,それによって肝臓内の脂肪生成が進み、肝臓のインスリン耐性ができ、高脂症、糖尿病などの様々な慢性病を引き起こす原因になります。また、ミトコンドリア内のエネルギー源ATP(アデノシン3リン酸)が不足,それによって副産物の尿酸量が増加、通風の危険性を高め、血圧も上昇させます。ブドウ糖も同様の代謝経路をたどる事もありますが、食べた量のわずか2割だけが肝臓で代謝されるので肝臓への負担は果糖に比べて四分の一です。果糖はさらに身体を痛めます。活性酸素の生成を促し、組織の機能障害や老化をおこします。さらに脳の報復系を阻害して、食欲を押さえにくくします。これら現象は飲酒後に似ているので、果糖はただのカロリーというよりはアルコールと同様の悪影響をもたらすいわばエタノールのいとこ。唯一の違いは、飲酒時のような酩酊感は引き起こさないことだけで、脳に快楽を与え、同様に代謝されることからこのタイトルがついたのですね。アメリカは飲酒制限が厳しいけれど、子供を守るには“果糖、砂糖制限”も必要と言う考えもあります。ただし,果糖や砂糖が毒という訳ではありません。たとえば、朝や激しい運動後のようにエネルギーが不足していると、エネルギーとしてすぐ使われたり、グリコーゲンとして貯蔵されたり、タンパク質に変換されたりします(これについてはまた別の機会に詳しく書きます)。とりあえず、ジュースやお菓子、さらには甘いおかずで子供が脂肪肝!なんて事にならないように気をつけたいですね。
参考文献: Fructose: It's "Alcohol Without the Buzz". Lustig RH. Adv Nutr. 2013 Mar 1;4(2):226-35. doi: 10.3945/an.112.002998.
甘味料
先日お友達から質問されたのでちょっとまとめてみました。
天然甘味料には大きく分けて、(1) 食品中に微量に含まれている甘み成分を取り出し精製、濃縮したもの、(2)酵素処理等によって甘み成分を合成したものと(3)特殊な処理を伴わず食品のままで甘味料として利用されるものがあります。このうち1と3のグループは食品、2のグループは添加物として日本では扱われます。