災害時における心の栄養

皆さんは、災害対策は大丈夫ですか?もちろん、懐中電灯や食料などの「モノ」の準備は重要ですが、「ココロ」の準備はどうでしょうか?人は、大きな恐怖に襲われると、まるでヘッドライトの前に飛び出した鹿のように動けなくなります。これは、感情に関わる脳細胞が「炎上」することで、物事を判断したり、コントロールしたりする脳細胞のエネルギーを奪ってしまうことが関係していると考えられています。余震や映像、ネット情報でその時の恐怖を思い出すたびに、脳の中ではまるで同じ恐怖体験が起きているかのように「炎上」が起こるため、脳のネットワークは恐怖に適応するように変えられてゆき、意欲の低下や考えがまとまらないなどの症状が出ます。子供の場合、大きな災害後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥る危険が高いと考えられています。ではどうすれば良いのか?栄養学の立場からお答えします。

一言で言えば、脳の栄養の確保です。脳はとても柔軟なので、もしあなたが必要以上に「災害ニュース」、特に壊れた家屋、泣き崩れる遺族などの恐怖を刺激するインプットばかりに固執すると、それに合わせて恐怖に特化した脳に変貌、集中力や判断力の脳細胞は燃料不足になって働けなくなります。なので、最初の一歩は恐怖を刺激するインプットをしないことです。次は、忙しく動くことです。じっとしていると、脳は働かなくなります。避難所にいても、ボランティアや、安否確認など、とにかく歩いて人と繋がることで脳の血流を良くします。できれば、お友達を誘って、体操や散歩をします。筋肉を動かすことで、脳細胞を増やし、ネットワークを作る物質が脳に送られます。最後に、食物繊維の豊富な食品をできるだけ多く食べることです。災害時の食事は炭水化物ばかりになりがちですが、食物繊維の豊富な食品を取ることで、脳内に、気持ちを安定させる物質が増えることがわかっています。それだけではなく、腸内細菌がビタミンなどの栄養素を作るので、栄養不足が解消できます。災害時には生野菜などは手に入りにくいかもしれませんが、ナッツ類や、乾物、カンズメの豆類など、買い置きできるものは多くあります。まずは、命を守る、その次は、健康を守る。もし参考にしていただけたら幸いです(2017年9月のワンポイント栄養学)。

Kayo Arima